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話題のサプリメントHMBの効果は? 学術研究から徹底検証する

筋トレをしていて、何らかのサプリをとっている人ならば、かならず聞いたことがあるはず。

HMB

とにかく最近はこのHMB関連のサプリメントの数が非常に増えたと感じています。ドラッグストアにも必ず置いてあります。

筋肉の分解を抑制し、筋肥大を促し、脂肪量の減少にも寄与するといわれているこのサプリメント。効果を見ると、筋トレをしている人にとってはマストアイテムのような存在ととれます。

私自身、週に2~3回ジムに通い、筋トレをやっている身です。現在ベンチプレスのMAXが130kgですが、ここを超えたあたりから、なかなか伸び悩みをしているので、サプリメントも積極的に活用しようとしています。もし本当に上記のような効果があるのならば積極的に取り入れたいと思っていました。

一方で、このHMB、効果があるのか、効果がないのか、議論の渦中のようです。ネットで「HMB 効果」と検索して、ざっと見てみましたが、意見が2分しており、本当に何が正しいかわからない状態です。

また効果があると言っているサイトであっても、根拠となる文献が示されていなかったり、新聞記事の引用だったりと、なかなか信頼性が担保されていないように感じました。

よって、本記事では、多数の被験者に対してHMBの効果を検証した学術研究を徹底調査し、

HMBって効果があるの?効果がないの?

について、現在の学術的な方向性はどちらになっているのか明らかにしていきたいと思います。

 

HMBとは 簡単におさらい

HMBについては、ググると、詳しく紹介されているサイトがたくさんありますので、詳細はそちらに譲るとして、ポイントだけ押さえます。

HMB β-Hydroxy-β-Methylbutyric acid(β-ヒドロキシ-βメチル酪酸)の略
必須アミノ酸の1つであるロイシンから生合成されます。
筋トレ関係の効果で、注目されているのが、
・運動による筋肥大効果の増大
・運動による骨格筋のダメージの軽減
・有酸素運動系パフォーマンスの向上
等で多岐にわたります。これらの効果は、HMBが筋肉中におけるタンパク質合成を促し、逆にタンパク質の分解を抑制するためといわれています。
参考 Wikipedia(英語)

 

HBMの効果はいかに

HMBの効果が発見されたのは、意外と古く1990年代に、アイオワ州立大学の研究チームによるとされています。私は、最近注目されたと思っていたのですが、かなり昔から研究が進んでいて、相当数の研究論文が発表されています。

ありがたいことに、HMBの効果について、メタアナリシスを実施した論文もいくつか報告されており、かなりの信頼性で、HMBの効果について知ることができます。

ちなみにメタアナリシスとは
平たくいうと、複数の研究結果を統合し、統計解析などの手法を使って、再分析することです。結果的にはデータの母数が多くなるので、より信頼性の高い結論に結びつきます。

こちらも下記のサイトがわかりやすいとおもいます。
素人でもわかる!システマティックレビュー、メタ分析をわかりやすく解説

 

HMBに関する過去の学術研究ではどのような結果が得られているか

まず、紹介する論文は、2009年にニュージーランドのMassey Universityの研究チームによるものです。

EFFECTS OF b-HYDROXY-b-METHYLBUTYRATE SUPPLEMENTATION DURING RESISTANCE TRAINING ON STRENGTH, BODY COMPOSITION, AND MUSCLE DAMAGE IN TRAINED AND UNTRAINED YOUNG MEN : A META-ANALYSIS
J Strength Cond Res. 2009;23(3):836‐846.
意訳:一般青年ならびにアスリートを対象とする負荷トレーニング中のHMB摂取が筋強度、体組成、筋肉のダメージに与える影響

この論文は、上記を実施するために、9つのHMBに関する研究論文を集約し、メタアナリシス的手法により、HMBの効果について、特に一般青年とアスリートというカテゴリーで評価しています。

被験者の数は、394人、年齢は23±2歳、HMBの摂取期間は1か月~2か月程度、その間、被験者は、週に5~6時間程度の運動を実施します。

結果を、表にまとめました

一般青年アスリート
上半身強度効果が認められない
2.1± 5.5%
効果が認められない
下半身強度僅かに効果が認められる
9.9±5.9%
効果が認められない
脂肪量効果が認められない効果が認められない

この研究での結論は、

・トレーニング未経験の一般青年においては、下半身強度に関しては、効果は小さいが、HMBの効果が認められる
・一方で、トレーニング経験者においては、HMBの効果は見られなかった

1~2か月の短期間という限定ですが、
下半身強度の増強については、HMBは効果があるという結論が出ています。上半身強度や、またトレーニング経験者には有意な効果がみられなかったとありますが、長期間の効果については、まだわからないということです。

トレーニング経験者に対するHMBの効果については、下記の論文でも、検証されています。この論文では、6つのHMB摂取に関する報告から、メタアナリシスに適用可能な193人の被験者を抽出しHMBの効果について検証しています。

Effects of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on strength and body composition in trained and competitive athletes: A meta-analysis of randomized controlled trials
J. Sci. Med. Sport 2018, 21, 727–735
意訳:トレーニング経験者、アスリートにおけるHMBの摂取が、筋力、体組成に与える影響

詳細は割愛しますが、こちらでも、効果の大きさを示す効果量(Effect Size:ES)で結果が示されており、
ベンチプレス ES=0.00
レッグプレス ES=0.09
体脂肪量   ES=-0.20
ESは、目安量であり、0.11~0.35が効果小、0.36~0.65が効果中、0.66から1.00が効果大とされています。

となっており、アスリートにおいては、HMBの効果が見られないと結論付けています。

とはいえ、

トレーニング未経験の人に対しては、特に下半身の筋力に対して効果が認められるということなので、これから、ジムに通おうという人は、早期に効果を上げるために、例えば、はじめの1か月など期間を決めて積極的に活用してもよいかと思います。

 

朗報 高齢者にはHMBの効果があるかもしれない!?

これまでの結果を見ると、HMBの効果は、ないわけではないけど、普段からトレーニングをしている人間にとっては、積極的にとるほどでもないなあと思わせるものでした。

調査を続けたところ、HMBに関する効果について面白いものを見つけたので最後に紹介します。

この論文も、HMBの効果について、メタアナリシスを実施したものです。この論文では、研究の対象を高齢者に限定して実施しています、

Effect of beta-hydroxy-beta-methylbutyrate supplementation on muscle loss in older adults: A systematic review and meta-analysis
Arch Gerontol Geriatr. 2015;61(2):168‐175.
意訳:HBPの摂取が高齢者の筋肉量の減少に与える影響

7つのHMBに関する論文を抽出し、65歳以上の高齢者、147人分の検証結果をまとめています。

結果は、上記にもある効果の大きさを示すESが0.352ということで、HMBの摂取によって、有意に筋肉量の増加が認められたと結論付けています。

高齢者においては、例えば、寝たきりや、運動量の減少などによる筋肉の減少がこわいところですが、HMBがそのような筋肉の減少を抑えられるかもしれないということです。メタアナリシスによる信頼性の高い結果ではありますが、まだデータ数は140強と少ないので、さらなる研究結果の更新が気になるところです。

 

HMBの効果についてまとめ

今回、メタアナリシスの論文を中心に抽出し、HMBの効果について検証してみました。

HMBは、最近注目されたサプリメントですが、もう20年以上も前から研究が進めらていて、かなりの研究データがたまっています。その一端をのぞいてみると、

HMBは効果がある、効果がないと、一言で片づけられるシンプルなものではない

ということがわかります。

そのうえで、結論を述べると以下のように集約されるのではないかと思います。

トレーニング未経験者にとっては、HMBの効果がありそう。これからジムに通ってすぐに結果を出したいのであれば、摂取する意味はある
普段からトレーニングをしている人にとっては、積極的にHMBをとる理由はない

HMBについては、摂取する意味のある人、無い人がはっきりと分かれるサプリメントなのかもしれません。山本義徳先生がHMBの効果について検証されている記事には
ハードなトレーニング・減量をしている人にはオススメ」
「あまりトレーニングしていない人は摂取しなくても良い」
とも書かれています。

運動強度の違いによって、HMB摂取群、非摂取群に違いがあるのか、無いのか、この部分が、HMBの効果を語るうえで、最も重要なポイントになるのではないかと思います。

論文調査を進めるなかで、これに答えを投げかけるものを見つけましたら、紹介したいと思います。