筋トレ

ダンベルプレスとベンチプレスの違いは?インクラインの効果・角度・使い分けも解説

「胸を鍛えるならダンベルプレスとベンチプレス、どちらがいい?」「インクラインも入れた方がいい?」「ダンベル30kgはベンチプレス何kgに相当する?」。胸のトレーニングでは、種目選びと重量の考え方で迷うことがあります。

ベンチプレスの記録を伸ばすならフラットのバーベルを軸に、腕の動かし方を調整したいならダンベル、胸の上部を重視するならインクライン、という整理から始めると選びやすくなります。

私は週2回程度のジム通いを続け、約3年でベンチプレス180kg程度に到達しました。普段の補助種目には、インクラインベンチプレス、足上げナローベンチプレス、バーベルカール、ディップスをよく取り入れています。この記事では、その中でもインクラインを含むプレス種目に注目し、目的別の使い分けをまとめます。

Contents
  1. 最初に結論|目的別に選ぶならこの組み合わせ
  2. ダンベルとバーベル、フラットとインクラインは別の比較
  3. ベンチプレスの強み|高重量の練習と進歩の管理
  4. ダンベルプレスの強み|左右の動きと軌道の自由度
  5. インクラインベンチプレスの効果|胸上部を重視する選択肢
  6. ダンベル30kgはベンチプレス何kg?重量の比較方法
  7. 重量・回数・セット数はどう決める?
  8. 週2回で組むメニュー例|目的に合わせた2パターン
  9. 取り組みやすくするためのチェックポイント
  10. よくある質問
  11. 次のトレーニングで決めること
  12. 参考文献

最初に結論|目的別に選ぶならこの組み合わせ

目的軸にする種目追加するなら
フラットベンチの最大重量を伸ばしたいフラット・バーベルベンチプレスインクラインを補助種目に
胸全体と上部をバランスよく鍛えたいフラットのプレスインクラインのプレス
左右それぞれの動きを確認したいダンベルプレス軽い重量で軌道と動く範囲をそろえる
胸上部を優先したいインクラインのプレス別日にフラットを組み合わせる
自宅でダンベルを使いたいフラット・ダンベルプレス角度調整式ベンチがあればインクラインも
時間が限られている最も伸ばしたいプレスを1種目余裕があれば異なる角度を1種目

組み合わせの基本は、目的に合うメイン種目を決め、その足りない部分を補助種目で補うことです。種目数を増やすことより、毎回のフォームと回数、回復状態をそろえて積み重ねることを重視します。

ダンベルとバーベル、フラットとインクラインは別の比較

まず、器具とベンチの角度を分けて考えましょう。ダンベル/バーベルは「持つ器具」、フラット/インクラインは「背もたれの角度」です。インクラインベンチプレスにも、バーベルとダンベルの両方があります。

種目器具・角度特徴と役割
フラット・バーベルベンチプレスバーベル/水平重量の進歩を追いやすく、フラットベンチの動作を練習できる
フラット・ダンベルプレスダンベル/水平左右が独立し、握りの向きや腕の軌道を調整しやすい
インクライン・バーベルベンチプレスバーベル/頭側を高くする胸上部を意識した角度で、バーベルのプレスを行える
インクライン・ダンベルプレスダンベル/頭側を高くする傾斜を付けながら、左右それぞれの軌道を調整できる

本記事では、単に「ベンチプレス」と書く場合はフラットのバーベル種目を指します。ダンベルの重量は片手あたり、バーベルはバーを含めた総重量で表記します。

ベンチプレスの強み|高重量の練習と進歩の管理

1.伸ばしたい動作そのものを練習できる

ベンチプレスの記録を伸ばすには、胸や腕の力に加え、ラックアップ、下ろす位置、押し上げる軌道、足と体幹の使い方も重要です。フラットのバーベルをメインにすると、これらを繰り返し練習できます。

補助種目で押す力を鍛えつつ、メイン種目でその力を発揮する動作を磨く、という役割分担です。

2.小刻みに重量を増やしやすい

例えば、左右に1.25kgずつ追加できる環境なら、総重量を60kgから62.5kgに増やせます。増加率は約4.2%です。ダンベルが片手20kgの次は22kgという刻みなら、増加率は10%。器具の刻みによって、次の重量へ進む難しさも変わります。

ダンベルで重量の段差が大きいときは、同じ重量で回数を伸ばしてから次に進む方法が使いやすくなります。

3.セットごとの比較条件をそろえやすい

握り幅、胸に下ろす位置、停止の有無、休憩時間を記録しておくと、「重量が伸びたのか」「動作条件が変わったのか」を整理できます。とくにMAX更新を目指す時期は、毎回の基準をそろえると進歩を確認しやすくなります。

ダンベルプレスの強み|左右の動きと軌道の自由度

1.左右それぞれで重さを支える

ダンベルは左右がつながっていないため、それぞれの腕で重さを支えます。押し上げるタイミングや軌道の違いに気付きやすいことが特徴です。左右差がある場合は、両側を同じフォームで動かせる重量に合わせましょう。

2.握りの向きや動く範囲を調整しやすい

ダンベルなら、手のひらを正面に向ける握りから、少し内側に向ける握りまで調整できます。胸の前でバーが当たらないため、動く範囲を調整する余地もあります。

下ろす深さは、胸の伸びを感じながら肩の位置を保てる範囲を目安にします。深さを増やすと肩が前に出たり、痛みが出たりする場合は、重量と動く範囲を調整してください。

3.使用重量の小ささだけで効果を判断しない

筋トレ経験のある男性12人を対象とした研究では、ダンベルプレスの左右合計1RMはバーベルより17%低かった一方、大胸筋と三角筋前部の筋活動に有意な差は認められませんでした。これは、器具による安定性の要求と使用重量の違いを示す比較です。筋肥大を目指す実践では、種目ごとのフォームと負荷の進歩を追うのが役立ちます。Saeterbakkenら(2011)の原著論文

インクラインベンチプレスの効果|胸上部を重視する選択肢

インクラインでは背もたれの頭側を高くして、上体に対する押す角度を変えます。大胸筋の上部、特に鎖骨側を重視したいときに組み込みやすい種目です。大胸筋のほか、三角筋前部や上腕三頭筋も働きます。

フラットを続けながらインクラインを取り入れると、異なる角度で押す練習ができます。私自身も、ベンチプレスの補助種目としてよく行っています。

角度は何度?まずは15〜30度を起点にする

胸上部を狙う実践上の出発点としては、15〜30度程度が試しやすい設定です。角度は水平を0度として考えます。

背もたれの角度使い方の目安確認すること
0度フラットの基準同じ条件で重量・回数を記録する
15度前後浅い傾斜から慣れるフラットとの押す感覚の違い
30度前後胸上部を重視する設定の候補肩がすくまず、胸で押す動きを保てるか
45度前後より立てた角度も比較したいとき肩前側の負担感、胸への刺激の変化
60度前後肩の関与が大きいプレスとして検討胸上部を狙う目的に合っているか

0・15・30・45・60度を比較した研究では、大胸筋上部の筋活動は30度、三角筋前部は60度で最も高いという結果が報告されています。運動中の筋活動を見た結果を角度選びの参考にし、実際にはフォームと継続時の進歩で調整すると活用しやすくなります。Rodríguez-Ridaoら(2020)の原著論文

ベンチの目盛りだけでなく、胸の張り方によっても上体の角度は変わります。背中を大きく反らせて傾斜を打ち消すより、臀部と背中を安定させ、設定した角度で押すことを意識しましょう。

インクラインはバーベルとダンベルのどちらがいい?

バーベルは重量の管理、ダンベルは握りと軌道の調整を重視して選ぶと整理できます。

  • インクライン・バーベル:ラックを使い、小刻みに重さを増やしたい人に向く。
  • インクライン・ダンベル:左右それぞれの動きを確認し、自分に合う握りの向きで押したい人に向く。

フラットがバーベルだからインクラインは必ずダンベル、という決め方をする必要はありません。使える設備、準備のしやすさ、続けやすさで選べます。

フォームで確認したい5点

  1. 背もたれの角度を決め、足裏と臀部を安定させる。
  2. 肩甲骨を軽く寄せ、胸を張り、肩をすくめない位置を作る。
  3. 手首だけが大きく反らないよう、重さを前腕で支える。
  4. 正面から見て手首がおおむね肘の上に来るよう、握り幅と肘の位置を調整する。
  5. 反動を使わず下ろし、左右の動きをそろえて押し上げる。

バーベルを下ろす位置はフラットより胸の上側に寄ることがありますが、首へ近付けることを目標にせず、前腕と手首を安定させられる位置を探します。痛みが出る動作は中断し、繰り返す場合は専門家に確認してください。

ダンベル30kgはベンチプレス何kg?重量の比較方法

片手30kgのダンベルは、左右合計60kgです。ただし、バーベル60kgと同じ難しさにはなりません。左右の安定性、可動域、セットアップ、種目への慣れが異なるためです。

前述の研究では、ダンベル左右合計1RMがバーベルの約83%でした。この関係を計算だけに使うと、60÷0.83≒72kgとなります。これは研究の集団結果を当てはめた比較例で、初めてバーベルを使う際の開始重量は、軽い重量から動作を確認して決めます。

特に、「ダンベル30kgで10回」と「バーベルの1回MAX」は条件が違います。まずはそれぞれの種目を同じ回数・同じ可動域で記録すると、実用的な比較ができます。インクラインも、角度ごとに別の記録として管理しましょう。

記録する項目記入例
種目と器具インクライン・ダンベルプレス
角度30度
重量片手20kg
各セットの回数10回/9回/8回
余力あと2回程度
休憩2分30秒

この記録なら、翌週の「10回/10回/9回」も進歩として分かります。フラットからの一律換算より、同じ種目で前回を上回れるかを基準にする方法です。

重量・回数・セット数はどう決める?

以下はメニューを組むための出発点です。ウォームアップを終えた後のワーキングセットを示しています。「あと2回」とは、同じフォームなら追加で2回ほどできそうな余力です。

役割回数・セットの例余力・休憩の例
ベンチの記録を伸ばすメイン4〜6回×3セットあと2回程度/3〜5分
フラット・ダンベルで胸を鍛える8〜12回×2〜3セットあと1〜3回/2〜3分
インクラインを補助にする8〜12回×2セットあと2回程度/2〜3分
軽めに動作を確認する日5〜8回×2セットあと4回以上/動作が整うまで休む

ACSMのポジションスタンドでは、筋力向上に向けて高負荷を扱う際の3〜5分の休憩や、目標回数を上回れるようになった段階での段階的な増量が示されています。上のセット構成は、それを参考にした実践用の例です。ACSM(2009):筋力トレーニングの進め方

8〜12回の範囲で、先に回数を伸ばす

例えばインクライン・ダンベルを片手20kg、2セットで始めた場合、10回・9回から、11回・10回、12回・12回へと進めます。両セット12回を安定して行え、あと1〜2回の余力もあれば、次の重量を検討します。

22kgに上げて8回・8回なら、新しい重量で回数を積み重ねます。動作が大きく崩れる場合は20kgに戻し、同じ角度と可動域で練習を続けると進歩を追いやすくなります。

詳しくは筋トレの重量を上げるタイミングと判断表で紹介しています。

週2回で組むメニュー例|目的に合わせた2パターン

私は週2〜3回程度を標準にし、疲労や調子に合わせて負荷を調整しています。回数を増やす週も、軽い負荷でテクニックや感覚を確かめる日を作ることがあります。以下は、その考え方を取り入れた胸のプレス部分のメニュー例です。

A.フラットベンチの記録を伸ばしたい場合

種目回数・セット
1日目:メインの日フラット・バーベル4〜6回×3セット、あと2回の余力
1日目:補助インクライン・バーベルまたはダンベル8〜12回×2セット
2日目:動作練習軽めのフラット・バーベル5〜8回×2セット、あと4回以上の余力
2日目:補助フラット・ダンベル8〜12回×2セット

2日間の間には、例えば2〜3日空けます。合計9セットですが、そのうち2セットは軽い動作練習です。翌週のメインに疲労が残る場合は、補助を1セット減らすか、2日目のダンベルを省いて調整します。

B.胸全体と上部をバランスよく鍛えたい場合

種目回数・セット
1日目フラット・バーベルまたはダンベル6〜10回×3セット
1日目インクライン・ダンベル8〜12回×2セット
2日目インクライン・バーベルまたはダンベル8〜12回×3セット
2日目フラット・ダンベル8〜12回×2セット

この例は週10セットです。胸のトレーニングを始めたばかりなら、まず各日1種目を2〜3セットずつ行い、回復と進歩を見ながら広げられます。胸上部を優先する日は、インクラインを先に行うと、その種目に集中しやすくなります。

ディップスや足上げナローを既に行っている場合は、その分も胸・肩・腕への負荷として数えます。追加したい種目が出てきたら、既存の補助と入れ替えると、全体量を管理しやすくなります。

取り組みやすくするためのチェックポイント

  • 開始と終了の動作まで管理する:バーベルはセーフティを適切な高さに設定し、高重量では補助者を付ける。ダンベルは持ち上げて構える動作と終了後に戻す動作まで制御できる重量を選ぶ。
  • 角度を固定して記録する:インクラインは毎回同じ目盛りを使い、胸の張り方もそろえる。
  • 肩が先に疲れるなら見直す:角度を一段下げ、重量を軽くして、肩のすくみと肘の位置を確認する。
  • 種目の順番を目的に合わせる:ベンチの記録を優先する日はフラット、胸上部を優先する日はインクラインを先にする。
  • 伸びを見て続ける:同じフォームで回数や重量が増えているか、次回までに回復できるかを確認する。

よくある質問

胸を大きくするならダンベルとバーベルのどちら?

どちらも胸を鍛える選択肢になります。重量を管理しやすい方、狙った動きを続けやすい方を軸に選びましょう。迷ったらフラットを1種目決め、必要に応じてインクラインを組み合わせると整理できます。

インクラインだけでもいい?

胸上部を優先する時期には、インクラインを中心に組めます。フラットベンチの記録も伸ばしたい場合は、週のどこかにフラットの練習を残すと、目的に合った構成になります。

インクラインの重量はフラットの何割が目安?

角度、慣れ、回数、フォームで変わるため、最初は軽い重量で8〜12回を安定して行い、あと2〜3回できそうな重さを探しましょう。一度決まったら、その種目・角度の記録を伸ばしていきます。

フラット・ダンベル・インクラインを同じ日に全部行うべき?

まずはメイン1種目と補助1種目で組むと、進歩と疲労を管理しやすくなります。3種目を使いたい場合は、週2回に分けて配置する方法もあります。

ダンベルプレスが伸びればベンチプレスも伸びる?

ダンベルで押す力を鍛えることは補助になります。ベンチプレスの記録向上に結び付けたいなら、バーベルでの軌道や体の使い方も練習し、両方の進歩を確認しましょう。

次のトレーニングで決めること

まずは、「フラットの記録」「胸全体」「胸上部」のどれを優先するかを決めます。その目的に合う種目を最初に行い、補助は1種目から。角度・重量・回数・余力を記録すると、次回の調整につながります。

補助種目全体の選び方は愛用4種目の効果と目的別の選び方、頻度はベンチプレスのトレーニング頻度、セット間の休憩はインターバルの使い分けも参考にしてください。

参考文献