「低糖質(ローカーボ)と低脂質(ローファット)、結局どちらが痩せるのか?」

結論から言うと、平均的な減量効果に大きな差はありません。短期から1年程度では低糖質がわずかに有利な研究もありますが、その差は多くの場合1kg前後で、2年程度では差が小さくなります。実際の成功を左右するのは、食事法の名前よりも、摂取エネルギー、食事の質、そして続けやすさです。

この記事では、従来紹介してきた3つの研究に加え、Cochraneレビュー、DIETFITS試験、2022〜2024年のメタアナリシスを確認し、体重、LDLコレステロール、中性脂肪、向いている人の違いまで整理します。

【この記事を書いた人】
10年以上の素材開発経験と8年以上のインフォマティクス活用経験を持つエンジニア兼データサイエンティストです。週2回程度のウエイトトレーニングを継続し、低糖質・低脂質の両方のダイエットを経験しています。個人の体験と研究結果を分けて、できるだけ数値に基づいて解説します。

結論:低糖質と低脂質の減量効果は長期ではほぼ互角

  • 短期〜1年:低糖質が平均1kg前後有利な研究がある
  • 1〜2年:差は小さくなり、Cochraneレビューではほとんど差がない
  • 血液検査:低糖質は中性脂肪とHDL、低脂質はLDL低下で有利な傾向
  • 成功の鍵:食事の質と継続性の両方を確保する

したがって、「どちらが絶対に優れているか」ではなく、現在の食生活で過剰になっているものを見つけ、無理なく続けられる方法を選ぶのが現実的です。

低糖質・低脂質・ケトジェニックの違い

研究によって定義が異なるため、「低糖質」と「低脂質」という言葉だけで結果を比較するのは危険です。代表的な目安を整理すると、次のようになります。

食事法研究で使われる主な目安特徴
緩やかな低糖質糖質が総エネルギーの40%以下など主食、菓子、甘い飲料を減らしやすい
厳格な低糖質糖質20〜25%程度、または1日50〜130g程度食品選択が狭くなり、食物繊維不足に注意
ケトジェニック糖質を極端に減らし、ケトーシスを目指す一般的な低糖質食とは分けて考える必要がある
低脂質脂質が総エネルギーの30%未満など揚げ物、脂身、菓子、油脂を減らしやすい

2022年のメタアナリシスでは、低糖質を「糖質40%以下」、低脂質を「脂質30%未満」と定義しています[6]。一方、過去の研究にはさらに厳しい制限も含まれているため、研究間の差は食事内容の違いも反映しています。

最新研究で低糖質と低脂質を比較

研究対象・期間主な結果
Stanford RCT(2016)[1]61人・6か月体重減少に有意差なし。低糖質群でLDL上昇
DIETFITS(2018)[4]609人・12か月低脂質−5.3kg、低糖質−6.0kg。群間差なし
Cochraneレビュー(2022)[5]61試験・6,925人・最長2年短期・長期とも体重減少差は小さい
低糖質vs低脂質メタ解析(2022)[6]33試験・3,939人・6か月以上6〜23か月は低糖質が平均1.33kg有利。24か月では差なし
DIETFITS追加解析(2023)[7]448人・12か月両食事法とも「食事の質+遵守」が高い人ほど良好
糖質制限量のメタ解析(2023)[8]110試験6〜12か月では糖質制限量と減量に関連。12か月超では単純な比例関係ではない

12か月:健康的な低糖質と低脂質に有意差はない

DIETFITS試験では、過体重または肥満の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食に割り付けました。12か月後の平均体重変化は、低脂質群で−5.3kg、低糖質群で−6.0kgでしたが、群間差は統計的に有意ではありませんでした[4]。

また、事前に調べた遺伝子型やインスリン分泌から「どちらが向いているか」を予測することもできませんでした。簡単な遺伝子検査だけで最適なダイエット法が決まる、とは言えない結果です。

最長2年:平均差は1kg未満

2022年のCochraneレビューは、61件のランダム化比較試験、合計6,925人を対象にしています。糖尿病の有無にかかわらず、低糖質食とバランス型の食事では、短期・長期とも体重減少と心血管リスク指標の差は小さいと結論づけています[5]。

一方、同年の別のメタアナリシスでは、6〜23か月の体重減少は低糖質群が平均1.33kg大きいという結果でした。ただし、24か月では差が確認されませんでした[6]。研究の定義や比較対象によって数値は変わりますが、「短期では低糖質が少し有利な場合があるものの、長期差は小さい」という点は共通しています。

旧記事で紹介した3つの研究から分かること

以前の記事で扱った2016〜2018年の研究も、研究の流れを理解するうえで有用です。

Stanford大学の6か月RCT

61人を対象に、インスリン抵抗性・感受性の違いも含めて比較したパイロット試験です[1]。

  • 低糖質群:平均8.6〜9.6kg減
  • 低脂質群:平均7.4〜10.4kg減

どちらの群でも大きく減量しましたが、食事法とインスリン状態の交互作用は有意ではありませんでした。小規模な予備的研究であるため、この1報だけで個人に適した方法を判断することはできません。

2016年と2018年のメタアナリシス

2016年のメタアナリシスでは11件のRCTを統合し、低糖質群の減量が平均2.1kg大きい結果でした[2]。2018年の33研究をまとめた解析でも、低糖質は短期でわずかに有利でしたが、時間とともに差は小さくなりました[3]。

これらの古い研究と、その後の大規模試験・レビューを合わせて考えると、「低糖質が短期的に少し有利な可能性はあるが、長期的な優位性は明確ではない」と解釈するのが妥当です。

LDL・HDL・中性脂肪への影響

体重だけでなく、血液検査の変化にも注目が必要です。

指標低糖質でみられやすい傾向低脂質でみられやすい傾向
中性脂肪より低下しやすい低下するが、低糖質ほどでない場合がある
HDLコレステロール上昇しやすい変化が小さい場合がある
LDLコレステロール上昇する人がいるより低下しやすい
体重短期でわずかに有利な場合がある長期では低糖質と大差なし

Stanford大学の小規模試験では、低糖質群のLDL変化量は3か月で平均+12.6〜+23.9mg/dL、6か月でも+6.5〜+17.8mg/dLでした[1]。6か月で上昇幅は小さくなりましたが、開始前より低下したわけではありません。

一方、2022年の33試験のメタアナリシスでは、低糖質は中性脂肪、HDL、体重でやや有利、低脂質は総コレステロールとLDLの低下でやや有利でした[6]。つまり、低糖質が一律に悪いのではなく、改善しやすい指標と注意すべき指標が異なるということです。

また、低糖質食によるLDL反応には個人差があります。2024年のメタ解析では、開始時BMIが低い集団ほどLDL上昇が大きい傾向が報告されています[9]。極端な糖質制限を行う場合は、体重だけでなく血液検査も確認したほうがよいでしょう。

低糖質が向いている可能性がある人

  • パン、麺、菓子、甘い飲料を日常的に多く摂っている
  • 主食の量を減らしてもストレスが少ない
  • 肉、魚、卵、大豆製品、野菜を使った食事を組み立てやすい
  • 中性脂肪や食後血糖が気になっている

ただし、糖質を減らした分を、加工肉やバターなどに偏って置き換えるのは避けます。魚、ナッツ、オリーブ油なども活用し、野菜、海藻、きのこ類から食物繊維を確保します。

低脂質が向いている可能性がある人

  • 揚げ物、脂身、菓子、クリーム、ドレッシングの摂取が多い
  • ご飯や果物を極端に減らしたくない
  • 高強度トレーニングや持久系運動を行っている
  • LDLコレステロールの上昇が気になっている

低脂質でも脂質をゼロにする必要はありません。魚、ナッツ、植物油などを適量残し、必須脂肪酸や脂溶性ビタミンの吸収に必要な脂質を確保します。

失敗しにくい選び方:まず1週間記録する

  1. 現在の食事を1週間記録する
  2. 糖質と脂質のどちらが過剰か確認する
  3. タンパク質と野菜を確保してから過剰分を減らす
  4. 体重は日々の値ではなく週平均で見る
  5. 空腹感、体調、トレーニング、継続しやすさも記録する

ダイエットの原則は、長期的に「消費エネルギー > 摂取エネルギー」となることです。ただし、低糖質と低脂質は、その状態を作るための手段にすぎません。食事法への遵守と食事の質を同時に高めた人ほど、低糖質・低脂質のどちらでも結果が良かったというDIETFITSの追加解析は、この考え方を支持しています[7]。

筆者が両方を試して感じたこと

私自身、低糖質と低脂質の両方を試し、どちらでも体重を落とした経験があります。この経験からも、「方法の名前だけで結果が決まるわけではない」という研究結果には納得しています。

個人の体験なので全員に当てはまるわけではありませんが、私が重視しているのは、食事内容を記録し、体重の変化だけでなく、空腹感、トレーニング時の感覚、継続しやすさまで振り返ることです。短期間で極端に減らすより、生活の中で無理なく維持できる方法のほうが、最終的には成功しやすいと考えています。

注意が必要な人

糖尿病治療中、腎疾患、肝疾患、脂質異常症、摂食障害の既往、妊娠・授乳中などの場合は、極端な糖質制限や脂質制限を自己判断で始めず、医師や管理栄養士に相談してください。

LDLコレステロールの評価や管理目標は、年齢、血圧、喫煙、糖尿病、心血管疾患歴などによって異なります。健診で高値を指摘された場合や、食事変更後に大きく上昇した場合も医療機関への相談が必要です。

よくある質問

短期間で体重が落ちやすいのはどちらですか?

平均では低糖質が短期にわずかに有利な研究があります。開始直後は、グリコーゲンと結びついた水分が減る影響もあるため、体脂肪の差だけとは限りません。

筋トレ中はどちらがよいですか?

高強度トレーニングでは糖質が重要なエネルギー源です。糖質を極端に減らすと、トレーニングの質が低下する人もいます。低脂質を選ぶ場合も脂質をゼロにせず、どちらでも十分なタンパク質と総エネルギーを確保してください。

低糖質ならカロリーを気にしなくてもよいですか?

いいえ。低糖質によって自然に食欲や摂取量が減る人はいますが、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回れば減量は進みにくくなります。

まとめ

  • 低糖質と低脂質の平均的な減量効果は、長期では大きく変わらない
  • 短期では低糖質が平均1kg前後有利な研究もある
  • 低糖質は中性脂肪・HDL、低脂質はLDL低下で有利な傾向がある
  • 食事の質と継続性を両立できる方法を選ぶ
  • まず1週間の食事記録から、現在摂りすぎているものを確認する

「低糖質か低脂質か」を先に決めるのではなく、自分の食生活を可視化し、過剰な部分を調整するところから始めるのがおすすめです。

参考文献

  1. Gardner CD, et al. Weight loss on low-fat vs. low-carbohydrate diets by insulin resistance status among overweight adults and adults with obesity. Obesity. 2016. PubMed
  2. Mansoor N, et al. Effects of low-carbohydrate diets v. low-fat diets on body weight and cardiovascular risk factors. Br J Nutr. 2016. PubMed
  3. Churuangsuk C, et al. Low-carbohydrate diets for overweight and obesity: a systematic review. Am J Clin Nutr. 2018. PubMed
  4. Gardner CD, et al. Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss. JAMA. 2018. PubMed
  5. Naude CE, et al. Low-carbohydrate versus balanced-carbohydrate diets for reducing weight and cardiovascular risk. Cochrane Database Syst Rev. 2022. PubMed
  6. Lei L, et al. Effects of low-carbohydrate diets versus low-fat diets on metabolic risk factors. Front Nutr. 2022. PubMed
  7. Landry MJ, et al. Association of dietary adherence and dietary quality with weight loss success. Am J Clin Nutr. 2023. PubMed
  8. Soltani S, et al. Effect of carbohydrate restriction on body weight: a systematic review and dose-response meta-analysis. Front Nutr. 2023. PubMed
  9. Soto-Mota A, et al. Increased LDL cholesterol on a low-carbohydrate diet in adults with normal but not high body weight: a meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2024. PubMed

関連記事

ABOUT ME
モス
材料開発・データ解析の実務経験と、ベンチプレス180kg到達までの実践をもとに、筋トレ・データサイエンス・英語の情報を発信しています。